「防災用品は一通りそろえてあるから安心です。」
このような声を耳にすることがあります。非常食や飲料水、懐中電灯、携帯ラジオ、救急用品、モバイルバッテリーなど、災害に備えて防災グッズを準備している家庭は年々増えています。これは大変喜ばしいことです。
しかし、ここで一つ考えてみたいことがあります。
「その備えは、本当に災害時に使えますか。」
防災用品を持っていることと、それを実際に活用できることは、必ずしも同じではありません。災害時には、想像以上に混乱し、普段できることが思うようにできなくなるものです。
防災で本当に大切なのは、「持っていること」ではなく、「使えること」です。
今回は、「その備え、本当に使えますか?」という視点から、防災について考えてみたいと思います。

防災用品は「しまったまま」になっていませんか
防災用品を購入したことで安心し、そのまま押し入れや物置に保管したままになっている家庭は少なくありません。
非常持ち出し袋を最後に開けたのはいつでしょうか。
懐中電灯の電池は切れていないでしょうか。
モバイルバッテリーは充電されていますか。
非常食や飲料水の賞味期限は過ぎていませんか。
いざという時、「あるはずだった防災用品」が使えない状態では意味がありません。
防災用品は一度準備したら終わりではなく、定期的に点検し、使える状態を維持することが重要です。
「使い方」を知らなければ役に立たない
災害時には、慣れない道具を使わなければならない場面があります。
携帯ラジオの操作方法が分からない。
簡易トイレを使ったことがない。
ガスコンロのボンベ交換ができない。
浄水器の使い方が分からない。
こうした状況では、せっかく準備していても十分に活用できません。
防災用品は、普段から実際に使ってみることが大切です。
非常食を試食してみる。
簡易トイレを一度組み立ててみる。
ランタンを点灯してみる。
「使ったことがある」という経験が、災害時の安心につながります。
家族全員が使えることが重要
防災用品の場所や使い方を知っているのが一人だけでは不十分です。
もし、その人が外出中だったらどうでしょうか。
あるいは、けがをして動けなかったらどうでしょうか。
家族全員が、
防災用品はどこにあるのか。
どうやって使うのか。
避難するときは何を持ち出すのか。
こうしたことを理解している必要があります。
子どもにも分かるように説明し、高齢の家族とも確認しておくことが大切です。
防災は、一人の知識ではなく、家族全員で共有する備えなのです。
備えは自分の暮らしに合っていますか
市販の防災セットは便利ですが、それだけで十分とは限りません。
乳幼児がいる家庭なら、粉ミルクやおむつが必要です。
高齢者がいる家庭なら、常備薬や介護用品が欠かせません。
ペットがいる家庭なら、ペットフードやリードも必要です。
また、眼鏡や補聴器、持病の薬など、人によって必要なものは異なります。
「一般的な備え」ではなく、「自分たちの生活に合った備え」を考えることが重要です。
防災は画一的なものではなく、それぞれの家庭に合わせて準備するものなのです。
停電や断水を体験してみる
災害時の生活をイメージするには、実際に体験してみることも有効です。
例えば、数時間だけ電気を使わずに過ごしてみる。
非常食だけで一食を済ませてみる。
懐中電灯だけで夜を過ごしてみる。
こうした「防災体験」を行うことで、不足しているものや不便な点が見えてきます。
「思ったより暗かった。」
「水をたくさん使うことに気付いた。」
「子どもが非常食を食べられなかった。」
このような気付きは、本当の備えにつながります。
情報の備えも忘れてはいけない
災害時には、物だけでなく情報も重要です。
スマートフォンの充電が切れたらどうするか。
家族と連絡が取れなくなったらどうするか。
避難所の場所を覚えているか。
防災アプリの使い方を知っているか。
こうした情報面の備えも欠かせません。
また、紙のハザードマップや家族の連絡先一覧など、デジタル機器が使えない場合の備えも用意しておきたいものです。
定期的な見直しが防災力を高める
防災用品は、一度そろえたら終わりではありません。
家族構成が変わる。
子どもが成長する。
新しい防災グッズが登場する。
ライフスタイルが変わる。
こうした変化に合わせて、備えも見直す必要があります。
年に一度、防災の日に点検するのも良いでしょう。
あるいは、季節の変わり目や年末年始など、毎年決まった時期に確認する習慣をつくることもおすすめです。
備えは「維持すること」が大切なのです。
「備える」から「使える」へ
これからの防災で大切なのは、「備えている」という安心感だけではありません。
「実際に使える」という確かな自信です。
道具を使った経験。
家族との話し合い。
避難経路の確認。
非常食の試食。
これらの積み重ねが、本当に役立つ備えになります。
防災用品は、飾っておくためのものではありません。
必要な時に迷わず使えるようにしておくことが、防災の本当の目的です。

「使える備え」が命を守る
災害は、私たちに準備の時間を与えてくれるとは限りません。
突然の地震、夜間の豪雨、予想を超える台風など、いつ何が起きてもおかしくありません。
そんな時、命を守るのは、高価な防災用品の数ではなく、「使える備え」があるかどうかです。
非常持ち出し袋を持ち運べるか。
懐中電灯をすぐに使えるか。
家族全員が避難場所を知っているか。
非常食を無理なく食べられるか。
一つひとつは小さなことですが、その積み重ねが災害時の大きな安心につながります。
防災とは、「持っていること」を確認することではありません。
「いざという時、本当に使えるか」を確かめ続けることです。
ぜひ一度、ご家庭の防災用品を開けてみてください。
そして、自分自身に問い掛けてみましょう。
「その備え、本当に使えますか。」
その問いへの答えを確かなものにしていくことが、自分自身と大切な家族の命を守る最も実践的な防災につながるのではないでしょうか。


