災害のニュースを見るたびに、「大変だな」「怖いな」と感じることは多いものです。しかし、その思いが「自分のこと」として実感されるかというと、必ずしもそうではありません。どこか遠い場所の出来事として受け止めてしまい、「自分にはまだ関係ない」と感じてしまうことも少なくないでしょう。けれども、災害はいつどこで起こるかわかりません。だからこそ、日頃から災害を「自分ごと」として捉える習慣を持つことが大切です。

では、なぜ私たちは災害を自分ごととして感じにくいのでしょうか。その一つの理由は、「距離感」にあります。被災地が遠ければ遠いほど、現実感は薄れてしまいます。また、自分の住んでいる地域で大きな災害が長らく起きていない場合、「ここは大丈夫だろう」という思い込みも生まれやすくなります。さらに、日常生活が忙しい中では、目の前のことが優先され、防災への意識が後回しになりがちです。
こうした中で、災害を自分ごとにするためには、「想像する力」を意識的に使うことが重要です。例えば、ニュースで被害の様子を見たときに、「これが自分の家だったらどうなるだろう」「同じ状況になったら、どこへ避難するだろう」と考えてみることです。少し立ち止まって想像するだけでも、受け止め方は大きく変わります。単なる情報が、自分の生活に結びついた現実として感じられるようになります。
また、「具体的な行動と結びつける」ことも効果的です。例えば、大雨のニュースを見た日に、自宅周辺のハザードマップを確認してみる。地震の話題を耳にしたら、家具の固定状況を見直してみる。このように、そのとき感じた気づきをすぐに小さな行動へとつなげることで、災害がより身近なものになります。行動を伴うことで、記憶にも残りやすくなり、意識の定着につながります。
さらに、「日常の中に防災を組み込む」ことも大切です。特別なこととして構えるのではなく、生活の一部として取り入れることで、自然と意識が高まります。例えば、買い物の際に少し多めに食料を備蓄する、外出先で避難場所の案内表示に目を向ける、スマートフォンの充電をこまめに確認するなど、日常の延長でできることは多くあります。こうした小さな習慣の積み重ねが、「自分ごと」としての意識を支えていきます。
加えて、「人と話すこと」も大きな力になります。家族や友人、地域の人と防災について話し合うことで、自分一人では気づかなかった視点に触れることができます。「いざという時はどこに集合するのか」「連絡が取れない場合はどうするのか」といった具体的な話題を共有することで、災害がより現実的な問題として感じられるようになります。また、周囲と共通認識を持つことは、実際の災害時にも大きな助けとなります。
一方で、「完璧を求めすぎないこと」も忘れてはいけません。すべてを一度に整えようとすると負担が大きくなり、かえって続かなくなってしまいます。「今日はこれだけできれば十分」といったように、小さな一歩を積み重ねていくことが大切です。自分ごとにするというのは、強い危機感を持ち続けることではなく、無理のない形で関心を持ち続けることだと言えるでしょう。
また、定期的に振り返る機会を持つことも有効です。例えば、季節の変わり目や年に数回、防災について見直す時間をつくることで、意識の風化を防ぐことができます。人は時間とともに忘れてしまうものですが、あらかじめ見直すタイミングを決めておくことで、自然と意識を引き戻すことができます。
災害を自分ごとにするというのは、特別なことではありません。日々の小さな気づきや行動を積み重ねることで、少しずつ育まれていくものです。遠い出来事として眺めるのではなく、「もし自分だったら」と考える習慣を持つこと。その積み重ねが、いざという時の判断や行動に大きな違いを生みます。

災害は避けることができないかもしれませんが、備えることはできます。そして、その第一歩は、「自分には関係ない」という意識を手放すことです。日常の中で少しだけ視点を変え、災害を身近なものとして捉えること。その積み重ねこそが、自分と大切な人を守る力につながっていくのではないでしょうか。


