大規模災害時、避難所から自宅へ徒歩で帰宅せざるを得ない状況は決して珍しくありません。交通機関の停止、道路寸断、二次災害の危険などにより、「歩いて帰る」という選択が命に直結する判断になることもあります。その一方で、徒歩帰宅中の体力消耗は想像以上に深刻で、脱水、低体温症、熱中症、持病の悪化、転倒事故など、さまざまなリスクを伴います。ここでは、徒歩帰宅時に起きやすい体力消耗の実態と、その予防策・対処策を詳しく解説します。

徒歩帰宅が体に与える負担の現実
災害時の徒歩帰宅は、通常のウォーキングとは全く異なります。
・瓦礫や段差の多い道
・信号が止まり、歩道と車道の区別が曖昧
・余震や悪天候への不安
・重い荷物を背負った状態
・十分な睡眠や食事が取れていない
これらが重なることで、短距離でも急激な体力消耗が起こります。特に高齢者、子ども、持病のある人は、10km未満でも歩行困難に陥るケースがあります。
体力消耗による主な危険
徒歩帰宅中に起きやすい健康リスクには以下があります。
① 脱水症状
水分補給が不足すると、めまい・頭痛・意識障害が起こります。
② 低血糖・栄養不足
食事を取らずに長時間歩くことで、ふらつきや判断力低下を招きます。
③ 低体温症・熱中症
季節により体温調整が追いつかず、命の危険につながります。
④ 筋肉疲労・関節痛
慣れない長距離歩行で歩行不能になることもあります。
⑤ 判断力低下による事故
疲労は「まだ大丈夫」という誤判断を生み、危険行動につながります。
徒歩帰宅前に必ず考えるべき判断
最も重要なのは、「本当に帰る必要があるのか」を冷静に判断することです。
・避難所が安全に機能している
・家族の安否が確認できていない
・自宅の被害状況が不明
これらの場合は、無理に帰宅せず避難所に留まる判断が体力消耗を防ぐ最善策になることもあります。
徒歩帰宅中の体力消耗を防ぐ行動
① ペースを落とす
「急がない」ことが最重要です。会話ができる程度の速度を維持します。
② こまめな休憩
30〜40分歩いたら5〜10分休憩し、靴を脱いで足を休ませます。
③ 水分と糖分を意識的に補給
少量をこまめに飲み、飴やチョコ、ビスケットなどでエネルギー補給を行います。
④ 荷物を減らす
不要な物は避難所に置き、体への負担を最小限にします。
⑤ 無理を感じたら立ち止まる
痛みや強い疲労を感じたら、勇気を持って中断します。
体調異変が起きた場合の対処法
・めまい、吐き気 → すぐに休憩し水分補給
・寒気、震え → 体を温め、風を避ける
・足の激痛 → 無理に歩かず救助要請
・意識がもうろう → 周囲に助けを求める
「助けを求めること」は決して恥ではありません。
事前にできる備えが命を守る
平時から以下の備えをしておくことで、体力消耗リスクは大きく下げられます。
・歩きやすい靴を職場に常備
・小型の水・行動食を準備
・帰宅ルートの複数確認
・徒歩帰宅訓練への参加

徒歩帰宅は「災害の延長」である
徒歩帰宅は避難の終わりではなく、新たな災害行動の始まりです。体力消耗を甘く見ず、「途中でやめる勇気」「休む判断」を持つことが命を守ります。災害時こそ、自分の体を最優先に考え、無理のない行動を心がけることが何より重要です。


