東日本大震災(2011年)や能登半島地震(2024年)では、避難所における混雑やプライバシー不足が深刻な問題として改めて浮き彫りになりました。これらは被災者の生活の質や健康、さらには災害関連死にも直結する重要な課題です。以下に、具体的に起きた問題と今後の課題を整理します。

過去の災害で明らかになった具体的な問題
避難所の過密化
東日本大震災では、学校の体育館など限られた空間に多数の避難者が集中しました。一人当たりの生活スペースは非常に狭く、寝返りも打てない状態が長期間続いた避難所も多くありました。能登半島地震でも、建物被害や寒冷期の発災により避難先が限られ、同様の過密状態が発生しました。
この過密化により、
- 感染症の拡大
- 睡眠不足やストレスの増大
- 高齢者や持病のある人の体調悪化
といった問題が多発しました。
プライバシーの欠如
多くの避難所では、間仕切りがなく床に雑魚寝という状況が一般的でした。着替えや授乳、簡易トイレの使用など、日常的な行為でさえ周囲の目を気にせざるを得ず、特に女性や子どもにとって大きな精神的負担となりました。
能登半島地震でも、簡易間仕切りやテントの不足により、プライバシー確保が遅れた避難所があり、不安や不満の声が上がりました。
要配慮者への対応不足
高齢者、障害のある人、乳幼児を抱える家庭、外国人などへの配慮が十分でない避難所も多く見られました。静かな環境や介助スペースが確保できず、避難所生活そのものが困難となり、車中泊や自宅半壊のまま留まる人も少なくありませんでした。

今後の課題と求められる対策
「避難所の質」を重視した備え
今後は「とりあえず命を守る場所」から、「人間らしい生活を維持できる場所」へと避難所の考え方を転換する必要があります。一人当たりの面積基準を明確にし、過密化を防ぐ計画づくりが求められます。
プライバシー確保の標準化
段ボールベッドや簡易パーテーション、個別テントなどを平時から備蓄し、迅速に設置できる体制が不可欠です。特に女性や子ども、要配慮者が安心して過ごせる空間づくりは優先課題です。
分散避難の推進
避難所への一極集中を避けるため、自宅が安全な場合の「在宅避難」や、親戚宅・ホテルなどを活用する分散避難を前提とした情報提供と制度整備が重要です。
地域と住民の事前準備
自治体任せにせず、地域住民自身が避難所運営に関わる意識を持ち、訓練を重ねることも欠かせません。避難所運営マニュアルの共有や、住民参加型訓練が今後の鍵となります。
これらの災害の教訓は、「避難所に行けば安心」という考えが必ずしも成り立たない現実を示しています。今後は量だけでなく質を重視した避難対策を進めることで、被災後の生活と尊厳を守ることが求められています。


