非常口が物置化してしまう問題は、多くの建物で見られる身近でありながら、人命に直結する重大な防災上の課題です。平常時には問題がないように見えても、火災や地震などの緊急時には、避難の遅れや混乱を招き、深刻な被害につながる恐れがあります。ここでは、その実態と原因、そして具体的な対策について解説します。

まず、非常口とは何のために設けられているのかを確認する必要があります。非常口は、火災や災害が発生した際に、建物内の人が安全かつ速やかに屋外へ避難するための出口です。通常の出入口が使えなくなった場合の「最後の命綱」とも言える存在であり、常に誰でも利用できる状態に保たれていなければなりません。
しかし現実には、非常口の前や通路部分に、段ボール、清掃用具、予備の机や椅子、在庫品などが置かれ、事実上の物置として使われているケースが少なくありません。特に、倉庫スペースが不足している職場や店舗、バックヤードの管理が行き届いていない建物で起こりやすい傾向があります。
このような物置化が起こる主な原因として、まず「非常時の想像がしにくい」という心理が挙げられます。災害は頻繁に起こるものではないため、「少しの間だけなら」「通れなくはないから大丈夫だろう」といった油断が積み重なり、結果として恒常的な放置につながります。また、非常口の使用頻度が低いため、その重要性が日常業務の中で軽視されやすいことも一因です。
非常口が塞がれていることの危険性は、単に「通りにくい」というレベルにとどまりません。火災時には煙が急速に広がり、視界が悪化します。暗闇や混乱の中で、障害物につまずいたり、進路が塞がれて引き返すことになれば、避難に致命的な遅れが生じる可能性があります。地震の場合でも、倒れた物や散乱物と相まって、脱出不能になる危険があります。
さらに、非常口の物置化は法律違反となる場合があります。消防法や建築基準法では、避難経路や非常口の確保が義務付けられており、消防の立入検査で指摘を受ければ、是正命令や指導、場合によっては罰則の対象となることもあります。つまり、これは「管理上のミス」ではなく、「安全管理責任の問題」でもあるのです。
では、どのように対策すればよいのでしょうか。第一に重要なのは、非常口は物を置いてはいけない場所であるという共通認識を持つことです。管理者だけでなく、利用者や従業員全員が理解し、守る必要があります。「一時的だから」という例外を認めない姿勢が大切です。
次に、定期的な点検と見回りを行うことが効果的です。日常点検や防災点検の際に、非常口や避難通路が確保されているかを必ず確認し、問題があればその場で是正します。写真を使ったチェックリストや担当者の明確化も有効です。
また、物置化の背景に収納不足がある場合は、代替となる保管場所を確保することも重要です。単に「置くな」と指示するだけでは根本解決にならず、結果として再発を招きます。収納計画の見直しや整理整頓の徹底が求められます。

まとめると、非常口の物置化問題は、
① 災害時の避難を妨げる重大な危険
② 日常の油断や管理不足から発生しやすい
③ 法令違反となる可能性がある
④ 全員の意識共有と継続的な点検が不可欠
という特徴があります。
非常口は「使わない場所」ではなく、「いざという時に必ず使う場所」です。平常時から適切に管理することが、命を守る最も確実な防災対策の一つと言えるでしょう。


