大規模災害後の長期避難生活への心のケアと仕組みづくり

ケアマネージャー 生活
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大規模災害後の長期避難生活では、強いストレスや心の不調を抱える人が数多く生じます。そのため、東日本大震災や能登半島地震では、ストレスを専門的にケアする人材と仕組みが実際に投入され、心のケアは災害支援の重要な柱となりました。

落ち込む女性モノクロ

まず結論から言えば、災害時のストレスをケアする専門家は存在し、実際に活動しています。代表的なのが、精神科医、心療内科医、臨床心理士・公認心理師、保健師、看護師、精神保健福祉士(PSW)などです。これらの専門職が連携して行う支援は「災害時心のケア」「精神保健医療支援」と呼ばれ、国や自治体が体制を整えています。

東日本大震災では、被災規模が極めて大きかったことから、厚生労働省の主導で**DPAT(災害派遣精神医療チーム)**が本格的に運用されました。DPATは、精神科医、看護師、心理職などで構成され、避難所や医療機関、仮設住宅を巡回し、心の不調を抱える人の早期発見と支援を行いました。強い不安、不眠、パニック症状、抑うつ状態、トラウマ反応などに対して、必要に応じてカウンセリング、薬物療法、医療機関へのつなぎを実施しました。

具体的なケアマネジメントとして重視されたのが、**「治療よりもまず安定」**という考え方です。災害直後は無理に心の問題を掘り下げるのではなく、安心できる環境づくり、十分な休息、生活リズムの確保を優先しました。専門家は被災者の話を否定せずに聴き、「それは自然な反応です」と伝えることで、不安や罪悪感を和らげる支援を行いました。これを「心理的応急処置(PFA)」と呼びます。

また、保健師によるアウトリーチ型支援も重要な役割を果たしました。避難所や仮設住宅を一軒一軒訪問し、表に出にくい高齢者や一人暮らしの人の変化を確認しました。食欲低下、閉じこもり、不眠、アルコール量の増加などを早期に察知し、必要に応じて専門職につなぐことで、孤立死や自殺の予防につなげました。能登半島地震でも、地理的に孤立しやすい地域特性を踏まえ、巡回型の支援が重視されています。

さらに、コミュニティを活用したケアマネジメントも行われました。仮設住宅では、集会所での交流会、体操教室、お茶会などを通じて、人とのつながりを回復する取り組みが進められました。専門家は裏方として関わり、住民同士が自然に支え合える環境を整える役割を担いました。これは「専門家が前面に出すぎない支援」として、ストレスの慢性化を防ぐ効果がありました。

一方で課題も明らかになりました。心の不調は時間が経ってから表面化することが多く、支援の終了が早すぎると見逃されてしまいます。そのため現在は、災害から数年単位での継続支援や、通常の医療・福祉サービスへ切れ目なく引き継ぐ体制づくりが重視されています。

空に浮かぶハート

これらの経験から、災害時のストレスケアは「特別な対応」ではなく、生活再建の基盤として位置づけられるようになりました。専門家による支援と、地域による見守りを組み合わせたケアマネジメントこそが、被災者が再び日常を取り戻すための重要な支えとなっているのです。

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