大規模災害後の長期避難生活は、被災者の心身や人間関係、生活基盤に深刻なストレスをもたらします。東日本大震災や能登半島地震では、避難が長期化する中で多くの問題や痛ましい事例が明らかになり、「命が助かった後」をどう支えるかが大きな課題として浮き彫りになりました。

まず、最も深刻だったのが健康問題と災害関連死です。東日本大震災では、避難所や仮設住宅での生活による体調悪化、持病の悪化、精神的ストレスが原因で亡くなる「災害関連死」が多数発生しました。寒さや暑さ、運動不足、栄養の偏り、医療へのアクセス不足が重なり、特に高齢者の負担は大きいものでした。能登半島地震でも、断水や寒冷な環境の中での避難生活が長引き、体調を崩す人が続出しました。
次に、精神的ストレスと孤立の問題があります。避難所ではプライバシーが確保されにくく、常に他人の目がある生活が続きます。東日本大震災では、家族を失った悲しみを抱えながらも、十分に気持ちを吐き出せない状況が続き、うつ状態や不眠に悩む人が多く見られました。仮設住宅に移ってからは、知り合いと離れて暮らすことになり、孤独死や自殺といった痛ましい事件も発生しました。
人間関係の摩擦やトラブルも避難生活特有の問題です。物資配布の不公平感、騒音、ペット、子どもの行動を巡る対立などが積み重なり、口論やトラブルに発展するケースがありました。能登半島地震では、避難所運営の人手不足からルールの徹底が難しく、不満や不安が表面化する場面も見られました。
さらに、将来が見えないことによる不安も大きなストレス要因です。自宅に戻れるのか、仕事は再開できるのか、補償や支援はどうなるのかといった不透明な状況が長く続くことで、精神的な疲弊が蓄積しました。特に東日本大震災では、原発事故による長期避難が続き、「帰れない避難」が人々の人生設計そのものを揺るがしました。
こうした問題を踏まえ、今後の打開策として重要なのは、避難生活の質を高める視点です。単に雨風をしのぐ場所を提供するだけでなく、早期からベッドや間仕切りを設置し、プライバシーと休息を確保することが不可欠です。また、医療・介護・心のケアを避難所段階から切れ目なく提供し、保健師や専門職が定期的に巡回する体制が求められます。
次に、孤立を防ぐ仕組みづくりです。仮設住宅やみなし仮設では、見守り活動や交流の場を意図的に設け、声をかけ合える関係を維持することが重要です。地域コミュニティを分断しない配置や、自治会活動の支援も効果的です。
さらに、見通しのある情報提供がストレス軽減につながります。復旧・復興のスケジュールや支援制度について、完全でなくても「現時点で分かっていること」を丁寧に伝えることで、不安を和らげることができます。

東日本大震災や能登半島地震の教訓は、避難生活の苦しさが「二次的な被害」を生む現実を示しています。これからの災害対策では、命を救うだけでなく、避難生活そのものを守る視点を持つことが、真の復興への第一歩と言えるでしょう。


