大きな災害が発生すると、被災者の生活に直結するのが「仕事」と「収入」への影響です。住居やインフラの被害に注目が集まりがちですが、働く場を失うことや収入が途絶えることは、復旧・復興の長期化につながる深刻な問題です。東日本大震災や能登半島地震では、その影響がさまざまな形で表れました。

まず、2011年の東日本大震災では、広範囲にわたる津波被害と原発事故により、多くの産業が同時に機能停止しました。沿岸部では漁港や加工場が壊滅的な被害を受け、漁業関係者は船や設備だけでなく、仕事そのものを一瞬で失いました。農業でも、農地の塩害や放射線への不安から作付けができなくなり、収入が途絶える世帯が続出しました。観光業も大きな打撃を受け、宿泊施設や飲食店は客足が戻るまで長期間にわたり売上が激減しました。
企業や工場の被害も深刻でした。建物や設備が損壊したことで操業停止を余儀なくされ、従業員が自宅待機や解雇、非正規雇用の場合は契約打ち切りとなるケースも多く見られました。特に中小企業では、資金繰りが立たず廃業に追い込まれる例もあり、地域全体の雇用が失われる結果となりました。通勤手段が断たれたことにより、職場が無事でも出勤できず、収入が減少するという問題も発生しました。
一方、2024年の能登半島地震では、人口減少と高齢化が進む地域特有の影響が顕著に表れました。観光業や伝統産業、地元商店など、地域密着型の仕事が多い中で、建物被害や断水・停電が長期化し、営業再開の目途が立たない事業者が相次ぎました。従業員数が少ない事業所では、事業主自身が被災し、再建の意思や体力を失って廃業を選ぶケースも見られました。その結果、働く場がさらに減り、若い世代の地域外流出を加速させる要因にもなりました。
また、両災害に共通するのが、収入減少が生活全体に連鎖的な影響を及ぼす点です。収入が減ることで貯蓄を切り崩し、将来への不安が強まります。住宅再建や修理に費用がかかる中で、仕事が安定しない状況は精神的な負担も大きく、心身の不調につながる例も少なくありませんでした。
こうした経験から見えてくるのは、災害は「一時的な被害」ではなく、「長期的な生活基盤の喪失」をもたらすという現実です。そのため、災害後には失業給付の特例、休業補償、事業再建支援、仮設商店街の整備など、仕事と収入を守るための支援策が重要になります。また、個人の立場でも、複数の収入源を持つ、緊急時の生活資金を備えるといった平時の準備が、災害後の生活再建を支える力になります。

東日本大震災や能登半島地震の教訓は、災害への備えが「命を守る」だけでなく、「暮らしと働く基盤を守る」視点まで含めて考える必要があることを示しています。仕事と収入への影響を正しく知ることは、現実的な防災・減災対策を考える第一歩と言えるでしょう。


