令和8年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする大規模地震が発生し、熊本県宇城市氷川町で最大震度7を観測しました。政府は直ちに災害対応に着手し、人命救助や被害状況の把握に全力を挙げています。
今回の地震で改めて私たちが考えなければならないのは、「真夏の大規模災害」という新たな課題です。
これまで地震対策というと、建物の耐震化や家具の固定、非常食や飲料水の備蓄などが中心でした。しかし、近年の日本では猛暑が常態化し、35度を超える日が珍しくありません。そのような中で発生した今回の地震は、「地震」と「酷暑」が同時に襲う複合災害の恐ろしさを私たちに突きつけました。
地震から命を守ることはもちろん重要ですが、その後の避難生活でも命を守り続けなければなりません。その大きな脅威となるのが熱中症です。

停電が奪う「涼しさ」
地震が発生すると、停電が起こる可能性があります。
普段は当たり前のように使っているエアコンや扇風機が止まり、冷蔵庫も使えなくなります。真夏の室内は短時間で高温となり、高齢者や乳幼児、持病のある方にとっては命に関わる環境へと変わります。
「家の中だから安全」という考えは、真夏の災害では通用しません。
停電が長引けば、水分補給だけでは体温を十分に下げることは難しくなります。電気は単なる生活インフラではなく、夏場には命を守るライフラインであることを、今回の地震は改めて認識させました。
避難所にも熱中症の危険
避難所は安全な場所というイメージがありますが、真夏には別の危険が潜んでいます。
体育館や公民館などは、大勢の人が集まることで室温や湿度が上昇しやすくなります。停電していれば冷房設備も十分に使えません。
さらに、多くの人が緊張や不安の中で生活を送るため、睡眠不足や食欲不振となり、体力が低下します。その結果、熱中症のリスクはさらに高まります。
避難所では、「地震の被災者」であると同時に、「暑さと戦う生活者」でもあるのです。
水不足が健康を脅かす
災害では断水も大きな問題です。
飲料水が十分に確保できない状況では、「トイレに行く回数を減らしたい」「水が貴重だから我慢しよう」と考えてしまう方もいます。
しかし、その我慢が脱水症状や熱中症につながります。
特に高齢者は、のどの渇きを感じにくいため、自覚がないまま脱水が進むことがあります。
真夏の避難生活では、「飲み水は節約するもの」ではなく、「命を守るために必要なもの」という認識が重要です。
車中泊の落とし穴
余震への不安やプライバシーの確保から、車中泊を選ぶ人も少なくありません。
しかし、夏の車内温度は短時間で危険なレベルまで上昇します。
日中の炎天下では、窓を少し開ける程度では十分な効果は期待できません。
一方で、エアコンを使用するために長時間エンジンをかけ続ければ、燃料不足や周辺環境への影響も生じます。
車中泊は安心感がある一方で、熱中症という新たな危険と隣り合わせであることを忘れてはいけません。
救助する側も命懸け
今回の地震では、自衛隊や消防、警察、自治体職員などが、人命救助や生活支援に全力を尽くしています。
しかし、救助する側も猛暑の中で活動しています。
重い装備を身に着け、炎天下で瓦礫の撤去や救助活動を続けることは、極めて過酷です。
災害対応では、「被災者の安全」だけでなく、「支援する人の安全」も守らなければなりません。
活動時間の管理や十分な休憩、水分・塩分補給など、熱中症対策を徹底することが、継続的な支援につながります。
災害関連死を防ぐために
地震そのものでは命を落とさなくても、避難生活の中で体調を崩し亡くなる「災害関連死」は大きな課題です。
熱中症は、その原因の一つになり得ます。
「命は助かったから安心」ではありません。
避難生活が一週間、一か月と長引けば、暑さによる体力の消耗は確実に積み重なります。
だからこそ、熱中症対策も災害対応の重要な柱として考えなければなりません。
今後の防災は「複合災害」を前提に
今回の地震は、「地震対策だけでは十分ではない」ことを教えてくれました。
今後は、
・真夏の停電を想定する。
・飲料水を多めに備蓄する。
・経口補水液や塩分補給用品を準備する。
・携帯扇風機や冷却タオルを非常持出袋に入れる。
・避難所の冷房設備や給水体制を事前に確認する。
・高齢者や乳幼児、持病のある方への支援体制を地域で考える。
こうした「暑さへの備え」を、防災対策の標準として組み込む必要があります。

命を守るために今できること
令和8年熊本地震は、私たちに多くの教訓を残しました。
その一つが、「真夏の災害は、地震だけで終わらない」ということです。
これからの日本では、猛暑と自然災害が重なる可能性は決して特別なことではありません。
地震への備えと熱中症対策は、もはや別々に考えるものではなく、一体として備えるべき時代に入っています。
家庭では飲料水や暑さ対策用品を備え、地域では避難所の環境改善や要配慮者への支援体制を整え、行政・企業・住民が連携して「複合災害」に備えることが求められます。
災害は、いつ、どの季節に起こるか分かりません。
だからこそ、「揺れから命を守る備え」と「暑さから命を守る備え」の両方を持つことが、これからの防災の新しい常識となるでしょう。
令和8年熊本地震の教訓を決して風化させることなく、未来の災害で一人でも多くの命を守るために、私たち一人ひとりが今できる備えを始めることが何よりも大切なのです。


