災害便乗犯罪とは、地震・豪雨・台風・津波などの大規模災害が発生した際、その混乱や不安、社会機能の低下に乗じて行われる犯罪の総称です。被災者だけでなく、支援する側や地域社会全体を標的とし、復旧・復興を妨げる重大な社会問題となっています。以下では、災害便乗犯罪の種類、発生メカニズム、背景、被害の実態、そして防止策について考察します。

災害便乗犯罪の主な種類
窃盗・強盗
災害直後は、家屋の損壊や避難による無人化、停電による防犯機能の低下が起こります。この隙を突き、空き家や避難所周辺での窃盗、時には強盗事件が発生します。
特に、被災直後の「誰もが被害者」という状況では、異変に気づきにくい点が悪用されます。
詐欺(支援・給付金・義援金)
災害便乗犯罪の中でも特に多いのが詐欺です。
- 義援金・寄付金詐欺
- 行政や公的機関を装った給付金詐欺
- ボランティア募集を装った個人情報詐取
これらは「支援」「復旧」「緊急」という言葉で心理的判断力を奪い、被災者や善意の市民を狙います。
なりすまし・偽装行為
被災者、行政職員、工事業者、点検員などになりすまし、住宅への立ち入りや金銭請求を行う手口もあります。
「屋根が危険」「無料点検」と称して不当な修理契約を結ばせる悪質商法は、災害後に必ず問題となります。
デマ・偽情報の拡散
犯罪と認識されにくいものの、意図的なデマ拡散も災害便乗行為の一種です。
偽の被害情報や支援要請を流すことで混乱を助長し、詐欺や混乱誘発の土台となります。
なぜ災害時に犯罪が増えるのか
社会機能の一時的麻痺
災害時には、警察・行政・通信・物流などの機能が一時的に低下します。通常であれば抑止力となる制度や監視が弱まり、犯罪のリスクが高まります。
心理的脆弱性の増大
被災者や支援者は、不安、恐怖、焦りの中に置かれます。
この状態では、
- 冷静な判断ができない
- 「信じたい情報」を信じてしまう
- 早く問題を解決したいという焦り
が強まり、詐欺や不正に引っかかりやすくなります。
善意と緊急性の利用
災害は人の善意を一気に引き出します。犯罪者はそれを逆手に取り、「今すぐ」「あなたしかいない」といった言葉で行動を急がせます。
これは支援詐欺や義援金詐欺に共通する特徴です。
災害便乗犯罪がもたらす影響
災害便乗犯罪の被害は、単なる金銭的損失にとどまりません。
- 被災者が二重被害を受ける
- 支援活動への不信感が広がる
- 地域社会の連帯が弱まる
- 復旧・復興が遅れる
特に深刻なのは、「誰も信じられない」という空気が生まれることです。これは、災害対応に不可欠な助け合いを阻害します。
防止と対策の考え方
個人ができる対策
- 災害時こそ即断しない
- 金銭や個人情報を求められたら必ず疑う
- 公的支援は公式情報で確認する
- 不審な訪問や電話は一人で判断しない
「疑うこと」は自己防衛であり、冷酷さではありません。
社会・行政側の役割
行政は、支援制度や窓口をできるだけ早く、分かりやすく周知する必要があります。また、警察・自治体・メディアが連携し、典型的な詐欺手口を繰り返し注意喚起することも重要です。

まとめ
災害便乗犯罪は、災害そのものではなく「災害時の人と社会の弱さ」を狙う犯罪です。混乱、不安、善意、情報不足といった要素が重なることで、被害は拡大します。
だからこそ、災害への備えとは、物資や避難計画だけでなく、「非常時でも冷静に疑い、確認する力」を持つことでもあります。
社会全体でこの認識を共有することが、災害便乗犯罪を抑止し、真に必要な支援を守ることにつながります。


