地震の後に「湧水の量が急に増えた」「これまで枯れていた湧水が再び出始めた」という現象は、国内外の多くの地震で確認されています。これは偶然ではなく、地震によって地下の水の通り道や圧力状態が変化することで起こる、地質学的に説明可能な現象です。以下では、地震発生後に湧水が増加する主なメカニズムを、段階的に解説します。

地震による岩盤・地層の「割れ目」の発達
地震が発生すると、地下の岩盤や地層には強い応力変化が生じます。その結果、目に見えない微細な亀裂や割れ目が新たに生じたり、既存の割れ目が拡大・連結したりします。
地下水は、岩石そのものを流れるのではなく、割れ目や地層のすき間(透水経路)を通って移動しています。地震によってこれらの通路が広がると、これまで地表に到達できなかった地下水が流れやすくなり、湧水として地表に現れる量が増加します。
2.地下水圧の再配分と「押し出し効果」
地震では、地盤が圧縮されたり引き伸ばされたりします。圧縮を受けた地層では、内部の地下水が行き場を失い、圧力が上昇します。この水は、圧力の低い方向へ移動しようとするため、断層や亀裂を通じて地表へ押し出され、湧水量が増加します。
この現象は「間隙水圧の変化」とも呼ばれ、特に断層近くや谷地形、山麓部で顕著に現れます。
3.目詰まりの解消(フィルター効果の変化)
長い年月の間に、地下の水みちは細粒土や鉱物沈殿物、微生物などによって徐々に詰まっていきます。地震動はこれらを振るい落とし、地下水の通路を一時的に洗浄する効果を持ちます。
その結果、同じ水圧条件でも流量が増え、湧水量が増加したように見えることがあります。このタイプの増加は、数週間から数か月で元に戻る場合が多いのが特徴です。
4.帯水層どうしの連結
地下には、深さや地質の違いによって複数の帯水層(地下水を多く含む層)が存在します。通常は不透水層によって隔てられていますが、地震によってこの隔壁に亀裂が入ると、深い帯水層の水が浅い帯水層へ流入します。
深層地下水は水圧が高いことが多いため、浅層へ供給されることで湧水量が一時的に大きく増える場合があります。
5.地盤沈下・隆起による水位変化
地震に伴って地盤が沈下したり隆起したりすると、地下水位と地表の相対関係が変わります。地表が下がれば、これまで地下にあった水位が地表に近づき、自然湧出が起きやすい状態になります。
特に河岸段丘や扇状地の縁、谷底低地では、この影響が顕著です。
6.液状化に伴う地下水の噴出
砂質地盤で液状化が起きると、間隙水圧が急上昇し、地下水が砂とともに地表へ噴き出します。これは厳密には湧水とは異なりますが、地震後に水が増えたように見える原因の一つです。
7.増加は「前兆」ではない
重要な点として、地震後の湧水増加は、次の大地震の前兆ではありません。多くの場合、すでに起きた地震による地下構造の変化の結果です。時間とともに地下水系が再調整され、湧水量は徐々に元に戻ることが一般的です。

まとめ
地震後に湧水が増加するのは、
- 地下の割れ目が増え、水の通路が広がる
- 地下水圧の変化によって水が押し出される
- 目詰まりが解消され、流れが良くなる
- 帯水層が連結し、高圧の水が供給される
といった複数のメカニズムが重なって起こります。これは自然な地質反応であり、必ずしも危険な兆候ではありませんが、斜面崩壊や地すべりのリスクが高まる場合もあるため、周囲の変化には注意が必要です。


