災害時に山道や山間部で電波が不通になる問題は、地震・豪雨・土砂災害・大雪など日本の災害環境において極めて現実的かつ深刻な課題です。都市部では当たり前に使えるスマートフォンや通信アプリも、山道では一瞬で「使えない存在」になります。本稿では、なぜ山道で電波が途絶えやすいのか、実際に起こるリスク、そして事前の備え・発生時の対処・救助につなげる工夫について解説します。

なぜ山道では電波が不通になりやすいのか
① 地形的な問題
山道では、
・急峻な山肌
・深い谷
・カーブが連続する地形
が多く、携帯電話基地局からの電波が直進できず遮られるため、電波が極端に弱くなります。特に谷底や切り通しでは「圏外」になりやすいのが特徴です。
② 基地局の少なさ
人口の少ない山間部では、基地局の設置数が限られています。平常時はかろうじて通信できていても、
・災害による停電
・回線断線
・基地局の倒壊
が起きると、一帯が完全に通信不能になる可能性があります。
③ 災害時特有の要因
・地震によるアンテナ損傷
・豪雨による土砂崩れで光回線切断
・大雪による設備凍結
これらは復旧までに時間がかかり、孤立状態が長期化しやすいのが山道の特徴です。
電波不通が引き起こす具体的なリスク
① 救助要請ができない
最も深刻なのは、
・110番・119番に通じない
・位置情報を送れない
という状況です。事故や体調不良が起きても、自力で知らせる手段がない状態に陥ります。
② 正確な状況把握ができない
・通行止め情報
・土砂災害警戒情報
・避難指示
などが入手できず、「知らないまま危険地帯に進んでしまう」可能性があります。
③ 精神的な不安と判断力低下
通信が遮断されると、
・家族と連絡が取れない
・助けを呼べない
という不安から、冷静な判断ができなくなり、無理な行動を取ってしまう危険性が高まります。
事前にできる現実的な備え
① 山道では「通信できない前提」で行動する
最も重要なのは、
「スマホは使えなくなるもの」
と考える意識です。
② 事前情報のダウンロード
・地図アプリのオフライン地図
・避難所位置
・道路情報
は、電波があるうちに端末へ保存しておきます。
③ 家族・職場への事前共有
・通るルート
・目的地
・帰宅予定時刻
を伝えておくことで、連絡が取れなくなっても捜索の手がかりになります。
④ モバイルバッテリーの携行
山道では、
・寒さ
・圏外探索による電池消耗
で、バッテリーが急激に減ります。複数回充電できる容量が望ましいです。
電波が不通になった場合の基本行動
① 無理に移動しない
通信ができない状態での移動は、
・道迷い
・二次災害
のリスクが高まります。安全な場所で待機する判断も重要です。
② 端末の省電力管理
・機内モード
・画面輝度を下げる
・不要なアプリを終了
通信が復活した瞬間に備え、電源を温存します。
③ 高所・開けた場所を探す
電波は、
・尾根
・橋の上
・開けた駐車スペース
でつながる可能性があります。ただし、崖や落石地帯には近づかないことが大前提です。
通信手段が完全に断たれた場合の代替策
① 車の場合
・発炎筒
・ハザードランプ
・ボンネットを開ける
など、視覚的に異常を知らせる行動が有効です。
② 徒歩・登山者の場合
・笛(ホイッスル)
・反射材
・明るい服装
音や光は、電波に代わる重要な合図になります。
③ 防災無線・ラジオ
自治体の防災無線や、
・携帯ラジオ
は、情報を「受け取る手段」として非常に有効です。
救助につなげるための行動意識
・無理に下山・移動しない
・目立つ場所で待機
・体力と体温を維持
救助は「発見されやすい人」から行われます。安全に留まることが最大の自己防衛になる場合もあります。
今後に向けた課題と私たちの姿勢
日本は、
・山が多い
・自然災害が多い
という特性上、山道での通信断絶は避けられない問題です。技術の進歩だけに頼らず、
・事前の想定
・アナログな備え
・冷静な判断
を組み合わせることが、命を守る現実的な対策です。

まとめ
災害時の山道では、
・電波が途絶える
・情報が遮断される
・助けを呼べない
という三重のリスクが発生します。しかし、
・事前準備
・行動ルールの理解
・「動かない勇気」
を持つことで、被害を最小限に抑えることは可能です。
通信がない状況でも生き延びる知識こそが、本当の防災力です。
山道に入る前から、災害はすでに始まっている——その意識が、あなたと周囲の命を守ります。


