東日本大震災(2011年)および能登半島地震(2024年)では、いずれも避難所における感染症対策の難しさが大きな課題として浮き彫りになりました。ただし、発生した時代背景や災害規模、地域性の違いにより、状況や対応には差が見られます。

東日本大震災時の感染症問題と対応
発災直後の状況
東日本大震災では、地震・津波・原発事故が同時に発生し、数十万人規模の避難者が長期間にわたり避難生活を余儀なくされました。体育館や学校などの避難所は過密状態となり、以下のような問題が発生しました。
- 十分なスペースを確保できず、雑魚寝状態
- 断水・停電による手洗いやトイレ清掃の困難
- 寒冷期(3月)で換気が不十分
この環境下で、**インフルエンザや感染性胃腸炎(ノロウイルス)**の集団発生が報告されました。特に高齢者が多い避難所では、肺炎などに悪化し、災害関連死につながったケースもあります。
当時の対処事例
震災当初は感染症対策が後手に回りましたが、時間の経過とともに次のような対応が進められました。
- 医療チーム(DMAT・JMAT)による巡回診療
- 発熱者や下痢症状のある人の簡易隔離
- マスク・消毒液の配布
- トイレ清掃ルールの明確化
しかし、「感染症対策の重要性」が本格的に認識されたのは、集団感染が発生した後であった点が教訓とされています。
能登半島地震時の感染症問題と対応
背景の違い
能登半島地震は、新型コロナウイルス流行を経験した後の災害であり、避難所運営における感染症対策の意識は格段に高い状態で発災しました。
そのため、発災初期から以下の点が重視されました。
- 発熱者・体調不良者の動線分離
- パーテーションの設置
- マスク着用や手指消毒の徹底
- 避難者の健康状態確認
それでも発生した課題
一方で、能登半島地震では以下のような問題も顕在化しました。
- 高齢者が多く、体調悪化が起こりやすい
- 断水の長期化による衛生環境悪化
- 医療機関へのアクセスが困難
- 寒さによる換気不足
このため、風邪症状や胃腸炎が疑われる事例は複数確認され、完全に感染症リスクを排除できたわけではありませんでした。
両災害から見える違いと共通点
共通点
- 避難所の過密化が最大のリスク要因
- 衛生環境の悪化が感染症を助長
- 高齢者が特に影響を受けやすい
- 初動対応の重要性が極めて高い
違い
- 東日本大震災:感染症対策の知見・体制が不十分
- 能登半島地震:コロナ禍の経験を活かした予防重視型対応

教訓と今後への活かし方
東日本大震災は「感染症対策は後回しにすると被害が拡大する」ことを示し、能登半島地震は「事前準備と意識が被害を抑える」可能性を示しました。
今後の災害では、
- 避難所設計段階から感染症対策を組み込む
- 個人レベルでの備え(マスク・消毒用品)
- 早期の健康チェック体制構築
これらが、災害関連死を減らすために不可欠となります。
災害時の感染症対策は、経験を積み重ねることで確実に進化していますが、完全な正解はありません。だからこそ、過去の事例を学び続けることが、次の災害で命を守る力になります。

