災害時の空き巣被害は、地震・台風・豪雨・噴火などの大規模災害が発生した直後から顕在化する深刻な社会問題です。被災そのものによる損害に加え、住民が避難を余儀なくされることで住宅が無人化し、その隙を突いた犯罪が発生します。これは単なる治安悪化ではなく、災害時特有の社会的・心理的要因が複雑に絡み合った「二次被害」と言えます。

災害時に空き巣被害が増える理由
住宅の無人化と監視低下
災害が起きると、多くの住民が避難所へ移動します。特に夜間や長期避難の場合、住宅は完全に無人となり、防犯上の弱点が一気に露呈します。
停電によって街灯や防犯灯が消え、防犯カメラや警報装置が作動しなくなることも少なくありません。こうした状況は、空き巣にとって極めて好都合です。
警察・行政機能の分散
災害時、警察や消防は人命救助や交通整理などを最優先とします。その結果、通常のパトロールや軽犯罪への対応が手薄になりやすくなります。
犯罪者はこの状況を理解しており、「今は捕まりにくい」という認識のもとで行動します。
混乱と異常事態がもたらす心理的隙
住民側も、家屋の損壊や家族の安否、生活再建への不安で頭がいっぱいになります。「まさかこの状況で空き巣が入るとは思わなかった」という油断が生じ、防犯対策が後回しにされがちです。
災害時の空き巣の特徴的な手口
被災者を装った侵入
避難所の腕章や支援物資を持ち、被災者やボランティアを装って住宅に近づくケースがあります。災害時は見知らぬ人が出入りするため、不審に思われにくいのが特徴です。
短時間・複数犯行
災害時の空き巣は、長時間の滞在を避け、短時間で現金や貴金属を奪う傾向があります。また、複数人で手分けして犯行を行うケースもあり、被害が広範囲に及ぶことがあります。
被災状況を見て標的を選ぶ
「玄関が壊れている」「窓が割れている」「ブルーシートがかかっている」といった外観は、無人である可能性が高いと判断されやすく、狙われやすくなります。
被害がもたらす深刻な影響
災害時の空き巣被害は、単なる金銭的損失以上のダメージを与えます。
- 被災者の精神的ショックの増大
- 「安全な場所がない」という不安の定着
- 地域コミュニティへの不信感
- 復旧・復興への意欲低下
特に、避難先から戻った際に荒らされた自宅を目にする体験は、被災者に深い無力感を与えます。
防止のために必要な対策
個人レベルでできること
- 避難時でも必ず施錠する
- 現金や貴重品は可能な限り持ち出す
- 郵便物の停止手続きを行う
- 防犯カメラやセンサーライトを事前に設置する
完全な防止は難しくとも、「狙われにくい家」にすることが重要です。
地域・行政の役割
自治体や警察による臨時パトロール、地域住民同士の声かけ、避難所での防犯注意喚起は大きな抑止力になります。
また、「災害時も犯罪は起きる」という現実を平時から共有しておくことが、被害軽減につながります。

まとめ
災害時の空き巣被害は、自然災害そのものではなく、「災害によって生じた社会の隙」を突く人災です。
被災者が最も弱い立場に置かれた瞬間を狙う行為は、社会的にも強く非難されるべきものです。
災害への備えとは、命を守る行動だけでなく、「非常時でも犯罪は起きる」という現実を前提にした防犯意識を持つことでもあります。
この認識を個人・地域・社会全体で共有することが、二次被害を防ぎ、真の意味での災害対策につながるのです。


