近年、日本では猛暑日や熱帯夜が増加し、「酷暑」と呼ばれる極端な高温環境が日常化しつつあります。こうした状況の中で注意すべき健康被害が熱中症です。熱中症は屋外だけでなく、室内や夜間にも発生し、重症化すると命に関わるため、その発生メカニズムを正しく理解することが重要です。

人の体は「体温を一定に保つ仕組み」を持っている
人間の体は、外気温が変化しても体温を約36~37℃に保つ「体温調節機能」を備えています。この機能の中心となるのが、脳の視床下部です。視床下部は体内外の温度情報を感知し、暑いときには汗をかかせたり、皮膚の血管を拡張させたりして体内の熱を外へ逃がそうとします。
通常、体は
・発汗による気化熱
・皮膚からの放熱(血流増加)
という二つの仕組みで体温を下げています。
酷暑環境では「熱を逃がせなくなる」
酷暑下では、この体温調節機能がうまく働かなくなります。気温が体温に近い、あるいはそれ以上になると、皮膚から外へ熱を逃がすことが困難になります。さらに湿度が高い場合、汗が蒸発しにくくなり、気化熱による体温低下が起こりません。
その結果、体内に熱が蓄積され、体温が急激に上昇します。これが体温調節の破綻であり、熱中症の第一段階です。
脱水と塩分不足が症状を悪化させる
大量の発汗は、体内の水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失わせます。水分補給が不十分だったり、水だけを大量に飲み続けたりすると、体内の塩分濃度が低下します。
塩分不足が起こると、
・筋肉のけいれん
・めまい、立ちくらみ
・血圧低下
が生じやすくなり、体温調節機能もさらに低下します。これが熱中症が急速に悪化する原因の一つです。
体内の循環障害が起こる
体温を下げるため、体は皮膚に血液を集中させます。その結果、内臓や脳への血流が一時的に不足します。これにより、
・頭痛
・吐き気
・倦怠感
・意識障害
といった症状が現れます。
さらに脱水が進行すると血液が濃くなり、心臓に負担がかかり、重症例ではショック状態に陥ることもあります。
重症化すると「臓器障害」に進行する
体温が40℃近くまで上昇すると、体内のタンパク質や酵素が正常に働かなくなります。その結果、
・脳(意識障害、けいれん)
・腎臓(急性腎不全)
・肝臓(肝機能障害)
など、全身の臓器に障害が及びます。
特に高齢者や乳幼児、持病のある人は体温調節機能が弱く、重症化しやすい特徴があります。
室内や夜間でも起こる理由
熱中症は屋外だけでなく、室内や就寝中にも発生します。
風通しの悪い住宅や、エアコンを使用していない部屋では、室温と湿度が高くなり、体温が下がりません。また、高齢者は暑さを感じにくく、発汗量も少ないため、異変に気づきにくい点が大きなリスクとなります。
酷暑と生活習慣の関係
睡眠不足、栄養不足、飲酒、体調不良は、体温調節機能を低下させます。特に酷暑が続く時期は、疲労が蓄積しやすく、熱中症の発症リスクが一層高まります。

おわりに
酷暑による熱中症は、「暑さ」そのものだけでなく、体温調節機能の限界、脱水、循環障害が複合的に重なって発生します。
発生メカニズムを理解することで、早めの水分・塩分補給、適切な冷房使用、休息の重要性が明確になります。
熱中症は正しい知識と行動で防ぐことができる災害であり、酷暑時代を安全に生き抜くための必須知識といえるでしょう。


