内水氾濫(ないすいはんらん)とは、河川が氾濫していないにもかかわらず、雨水が排水しきれずに市街地などにあふれ出る現象を指します。近年、都市部を中心に被害が増えており、「川が決壊していないのに浸水する」という点で、多くの人にとって分かりにくい災害の一つです。ここでは、内水氾濫の仕組みや特徴、そして予防策・対処策について詳しく解説します。

内水氾濫とは何か
内水氾濫は、主に下水道や側溝、用水路などの排水能力を超える雨が短時間に降ることで発生します。大雨によって道路や宅地に降った雨水が排水されず、低い場所にたまってしまうのが特徴です。
これに対し、河川が増水して堤防を越えたり、決壊したりして起こるものは「外水氾濫」と呼ばれます。内水氾濫は河川の水位が危険水準に達していなくても起こるため、住民が油断しやすい災害と言えます。
内水氾濫が起こりやすい場所
内水氾濫は、次のような場所で特に発生しやすくなります。
まず、都市部や住宅密集地です。アスファルトやコンクリートで覆われた地面は雨水が地中に浸透しにくく、短時間で大量の雨水が流れ出します。その結果、下水道に負荷が集中します。
次に、低地やくぼ地です。周囲より標高が低い場所では、水が集まりやすく、排水が追いつかないと浸水が深刻化します。地下街、地下駐車場、半地下住宅などは特に危険です。
また、下水道や排水施設が老朽化している地域や、ポンプ場の能力が不足している地域でも内水氾濫が起こりやすくなります。
近年、内水氾濫が増えている理由
内水氾濫が増加している背景には、いくつかの要因があります。
一つは、短時間豪雨の増加です。線状降水帯などにより、1時間に50mm以上の激しい雨が降るケースが珍しくなくなりました。これは、従来の下水道計画を超える雨量です。
二つ目は、都市化の進行です。地面の舗装率が高まり、雨水が一気に排水施設へ流れ込む構造になっています。
三つ目は、排水施設の整備が追いついていないことです。下水道やポンプ設備の能力拡張には多額の費用と時間が必要で、すぐには対応できないのが現状です。
内水氾濫による主な被害
内水氾濫の被害は、見た目以上に深刻です。
・道路冠水による通行不能、車の立ち往生
・住宅の床下・床上浸水
・地下施設への浸水
・電気設備や給湯器、ボイラーの故障
・マンホール噴出による転落事故
特に、冠水した道路ではマンホールのふたが外れていることがあり、非常に危険です。水深が浅く見えても、歩行や車両通行は命に関わります。
内水氾濫の予防策(平常時)
① 地域・行政による対策
自治体では、雨水貯留施設や調整池の整備、下水道管の拡張、ポンプ場の強化などが行われています。また、内水ハザードマップを作成し、浸水想定区域を住民に周知しています。
② 家庭でできる予防策
家庭でも、次のような対策が有効です。
・側溝や雨どいの清掃を定期的に行う
・土のうや止水板を事前に準備する
・浸水しやすい場所に電気設備を設置しない
・内水ハザードマップで自宅周辺の危険性を確認する
内水氾濫が発生しそうなときの対処策
大雨が予想される場合、まず外出を控えることが基本です。地下施設やアンダーパスには近づかないようにします。
自宅では、
・家財を高い位置へ移動する
・貴重品を防水袋に入れる
・止水板や土のうを設置する
といった行動が有効です。また、浸水が始まった場合、無理に外へ出るのは危険です。状況によっては、早めに上階へ垂直避難する判断も重要になります。
避難の判断で重要なポイント
内水氾濫では、「どこへ避難するか」よりも「いつ避難するか」が重要です。夜間や雨が激しくなる前に、安全な場所へ移動する、または上階へ避難する決断が被害を軽減します。

まとめ
内水氾濫は、
① 河川があふれていなくても起こる
② 都市部や低地で発生しやすい
③ 短時間豪雨の増加でリスクが高まっている
④ 見た目以上に危険な被害を伴う
という特徴があります。
内水氾濫は「身近で突然起こる災害」です。正しい知識を持ち、ハザードマップの確認や日常的な備えを行うことが、被害を最小限に抑える最も現実的な対策となります。


