災害写真や動画は、単なる記録や報道素材ではありません。大規模災害が発生した瞬間から復旧・復興に至るまで、社会の判断や人々の行動に大きな影響を与える極めて重要な情報資源です。文字や数値だけでは伝えきれない現実を可視化し、命を守る行動や将来の防災につなげる力を持っています。

まず、災害写真・動画の最大の役割は、危険を直感的に伝える力にあります。津波の高さ、河川の氾濫、土砂崩れの規模、建物の倒壊状況などは、文章で説明されても実感しにくいものです。しかし、映像を見ることで「この場所にいたらどうなるか」「逃げ遅れたらどうなるか」を瞬時に理解できます。東日本大震災で津波が市街地をのみ込む映像は、多くの人に津波避難の重要性を強く印象づけ、以後の防災意識を大きく変えました。
次に、行動を促す力です。災害情報は頭では理解していても、行動に結びつかないことが少なくありません。写真や動画は、危険を「自分事」として感じさせ、正常性バイアスを打ち破る効果があります。実際に被害状況を目にすることで、「まだ大丈夫」という思い込みが崩れ、避難や備えといった具体的な行動につながります。これは防災教育や訓練においても大きな効果を発揮します。
また、災害写真・動画は被災状況を正確に伝える証拠としても重要です。被害の規模や範囲、発生時刻、被災直後の状況を記録した映像は、行政の被害認定、支援制度の判断、保険請求、復旧計画の基礎資料として活用されます。能登半島地震や豪雨災害でも、住民や報道機関が撮影した映像が、被害把握や支援の優先順位決定に役立ちました。
さらに、記憶を風化させない役割も見逃せません。災害の記憶は、時間とともに薄れていきます。しかし、写真や動画は「その時何が起きたのか」を後世に伝える力を持っています。震災遺構や記録映像は、防災学習の教材として活用され、次の世代に教訓を引き継ぐ役割を果たしています。文字だけの記録よりも、映像の方が強く心に残り、「同じ被害を繰り返さない」という意識を育てます。
一方で、災害写真・動画の活用には倫理的配慮も不可欠です。被災者の尊厳やプライバシーへの配慮なく拡散される映像は、二次被害を生む恐れがあります。撮影・公開にあたっては、目的を明確にし、「伝えるための記録」であることを忘れてはなりません。適切な配慮のもとでこそ、災害写真・動画は社会にとって価値あるものになります。

このように、災害写真・動画は「見るための記録」ではなく、「命を守り、未来を変えるための情報」です。現実を正しく伝え、行動を促し、教訓を残す――その力を理解し、責任ある形で活用していくことが、これからの防災・減災においてますます重要になっていくでしょう。


