日本には、現在の耐震基準が導入される以前に建てられた住宅が数多く残っています。特に1981年(昭和56年)の新耐震基準以前、さらには2000年以前の木造住宅では、耐震性能が不十分なまま居住されているケースも少なくありません。大地震時に倒壊や大きな損傷を防ぐためには、古い住宅の耐震不足を正しく理解し、段階的に対処していくことが重要です。

まず現状を知る ― 耐震性の確認
① 建築年代の確認
耐震対策の第一歩は、住宅がいつ建てられたかを確認することです。
・1981年以前:旧耐震基準(震度5程度を想定)
・1981~2000年:新耐震基準だが、接合部規定が不十分な場合あり
・2000年以降:現行耐震基準
1981年以前の住宅は、特に注意が必要です。
② 耐震診断を受ける
自治体が実施する耐震診断を活用しましょう。多くの市町村では、無料または低額で専門家による簡易診断を受けられます。壁量、柱や梁の状態、基礎のひび割れ、接合金物の有無などを確認し、倒壊リスクを数値で把握できます。
本格的な耐震改修が難しい場合の対処法
① 部分的な補強から始める
全面改修が難しい場合でも、命を守る補強は可能です。
・耐力壁の追加(筋交い、構造用合板)
・柱と梁、柱と基礎を金物で補強
・基礎のひび割れ補修
これだけでも倒壊リスクを大きく下げられます。
② 居住空間を「安全ゾーン」にする
すべての部屋を補強できなくても、寝室や居間を重点的に補強し、地震時に逃げ込める安全な空間を確保します。家具固定と組み合わせることで効果が高まります。
③ 屋根・外壁の軽量化
重い瓦屋根は、揺れを増幅させ倒壊リスクを高めます。軽量金属屋根や軽量瓦への葺き替えは、比較的効果の高い耐震対策です。外壁も剥落しやすい材料の場合は補修を検討します。
日常的にできる倒壊・負傷防止策
① 家具固定の徹底
耐震補強が不十分な住宅ほど、家具転倒対策が重要です。タンスや本棚を壁に固定し、寝室や出入口には背の高い家具を置かない配置にします。
② 避難経路の確保
地震で建物が歪むと、ドアや窓が開かなくなることがあります。
・寝室に避難用スリッパ・懐中電灯を常備
・窓を非常出口として使えるよう周囲を整理
といった備えが有効です。
費用と支援制度を知る
耐震改修は費用面の不安が大きい対策ですが、多くの自治体では
・耐震診断補助
・耐震改修工事への補助金
・高齢者世帯向け支援制度
を用意しています。市町村の建築課や防災課に相談することで、負担を抑えた対策が可能になります。
「建て替え」も含めた長期的判断
耐震性能が極端に低い場合や、老朽化が進んでいる場合は、建て替えや住み替えも現実的な選択肢です。命を守る視点で、修繕と建て替えのどちらが合理的かを冷静に比較することが大切です。

耐震対策は「段階的」でよい
古い住宅の耐震不足への対処は、「一気に完璧にする」必要はありません。
現状を知る → 命を守る最低限の補強 → 生活しながら段階的に改善
この考え方が重要です。日常の安心を積み重ねることが、大地震から家族と暮らしを守る最善の方法と言えるでしょう。


