災害時には、地震や豪雨、津波といった緊急情報が日本語で一斉に発信されます。しかし、日本語が十分に理解できない外国人観光客や在留外国人にとっては、情報の意味が分からず、避難が遅れる大きな要因になります。過去の災害でも、情報不足や誤解によって危険な行動を取ってしまった事例が指摘されています。そのため、日本語が分からない人への情報提供は、人命を守るために欠かせない重要な支援です。

まず基本となる考え方は、「簡単・視覚的・多言語」です。専門用語や曖昧な表現は避け、短く分かりやすい言葉で伝えることが重要です。例えば「避難してください」ではなく、「ここは危険」「高い場所へ行く」といった具体的な行動を示す表現が有効です。加えて、矢印やピクトグラム(絵文字・図記号)を使うことで、言葉が分からなくても意図を伝えることができます。

多言語での情報提供も欠かせません。自治体や観光地では、英語・中国語・韓国語など主要言語での防災情報を準備しておくことが望まれます。災害時には、防災行政無線や掲示物、避難所案内に多言語表記を併用することで、より多くの人に情報を届けられます。スマートフォンを持っている人には、多言語対応の防災アプリや翻訳アプリを活用して、避難情報や注意点を伝える方法も有効です。
現場での声かけも重要な役割を果たします。日本語が分からない人を見かけた場合は、身振り手振りを交えながら、ゆっくり、はっきりと話します。大声で早口になると、かえって不安を与えてしまいます。「Danger」「Tsunami」「Evacuate」「Follow me」など、災害時によく使われる簡単な英単語を用いるだけでも、相手に状況が伝わりやすくなります。可能であれば、同じ言語を話せる人や通訳ボランティアにつなぐことも大切です。
避難所では、外国人が孤立しない配慮が必要です。受付時に使用言語を確認し、多言語の案内資料を渡すことで、生活ルールや支援内容を理解してもらいやすくなります。食事や宗教、文化的背景への配慮も重要で、「分からない」「言い出せない」状況を作らないことが支援の質を高めます。
また、正確な情報を繰り返し伝えることも大切です。災害時はデマや誤情報が広がりやすく、言語の壁があると誤解が深刻化しやすくなります。公式情報であることを示しながら、同じ内容を複数の手段で繰り返し伝えることで、理解と安心につながります。
最後に、平時からの準備が何より重要です。多言語の防災資料を整備し、地域や観光施設で共有しておくこと、住民や職員が「やさしい日本語」や簡単な外国語表現に慣れておくことが、災害時の迅速な対応につながります。日本語が分からない人への情報提供は特別な対応ではなく、誰一人取り残さない防災の基本です。平時の備えと現場での工夫が、多くの命を守る力となります。


