災害が発生した際、高齢の親が一人で自宅にいる状況は、家族にとって大きな不安要因となります。高齢者は体力や判断力が低下しやすく、情報取得や避難行動が遅れがちになるため、平時からの備えと発災時の対応を具体的に決めておくことが極めて重要です。ここでは「事前準備」「発災直後」「安否確認と支援」「避難後」の流れに沿って説明します。

まず、最も重要なのは平時の事前準備です。高齢の親と話し合い、「災害時はどう行動するか」を明確にしておく必要があります。避難が必要な災害(津波・洪水・土砂災害など)の場合、自宅に留まるのか、指定避難所へ向かうのかを事前に決め、地図を使って避難経路を確認します。階段や坂道がきつい場合は、より近い避難場所や垂直避難が可能な建物を選ぶことも重要です。また、避難が難しい場合は、自治体の「要配慮者名簿」や「個別避難計画」への登録を検討し、地域の支援体制につなげておくと安心です。
次に、連絡・安否確認の備えです。高齢者はスマートフォン操作が苦手な場合も多いため、使いやすい連絡手段を一つ決めておきます。電話が基本になる場合でも、災害用伝言ダイヤル(171)の使い方を紙に書いて電話機のそばに貼っておくと役立ちます。緊急時に備え、連絡先を書いたカードを財布や防災袋に入れておくことも大切です。可能であれば、見守りサービスや緊急通報装置の導入も検討すると良いでしょう。
発災直後は、まず親自身の身の安全を最優先にしてもらいます。強い揺れを感じたら、無理に外へ出ず、机の下に入る、頭を守るなど基本行動を取るよう繰り返し伝えておきます。揺れが収まった後も、余震や倒壊の危険があるため、自己判断で外出しないことが重要です。家族側も、すぐに駆けつけようと焦らず、道路状況や二次災害の危険を確認したうえで行動する必要があります。
安否確認は、可能であれば短い連絡で済ませます。「無事」「今いる場所」「困っていること」の三点が確認できれば十分です。連絡が取れない場合でも、すぐに最悪の事態を想定せず、災害用伝言サービス、近隣住民、自治体、民生委員など複数の経路を使って情報収集を行います。日頃から近所付き合いをしておくことで、こうした第三者による確認がしやすくなります。
避難が必要になった場合、高齢者は環境変化による体調悪化や認知機能の低下が起こりやすいため、支援が欠かせません。避難所では、高齢者向けスペースや福祉避難所の利用を検討し、我慢をさせ過ぎないことが大切です。常備薬やお薬手帳、眼鏡、補聴器など、生活に欠かせない物品は防災袋にまとめておくと安心です。

最後に、家族ができる最大の備えは「一人にしない仕組み」を作ることです。日常的な声かけや見守り、地域とのつながりが、災害時には命を守る大きな力になります。離れて暮らしていても、定期連絡や支援体制を整えておくことで、災害時の不安とリスクを大きく減らすことができます。高齢の親を守る防災は、日常の延長線上にある意識と準備から始まります。


